公務員の採用試験は1次試験で筆記試験、2次試験以降で面接ということが多く、面接は個人面接のほか、集団討論を行う場合があります。
筆記試験や個人面接の対策については参考書が多く、ネットにも良い情報がたくさんありますが、集団討論については情報が少なく、「対策の仕方がわからない」という方も多いのではないでしょうか。
集団討論を疎かにしては最終合格はできません。私自身、大学や公務員予備校の集団討論対策講座を活用し、集団討論の対策をしました。きちんと対策した結果、倍率23倍の市役所試験を突破することができました。
あまり知られていませんが、集団討論はライバルと一緒に受けるため、差別化できる良い機会です。きちんと集団討論のことを理解し、準備すれば他の受験者よりも優位に立つことができます。
そこで今回は集団討論を突破するコツを解説します。
まずは集団討論を理解する
集団討論を突破するコツを紹介する前に、公務員試験の集団討論を理解する必要があります。ここでは次の3つについて解説します。
- 集団討論の形式
- 集団討論の流れ
- 集団討論のテーマ
集団討論の形式
集団討論では6〜8名の受験者が1グループになり、与えられるテーマについて討論する試験です。試験時間は約45〜60分という自治体が多いです。
【参考】私が受験した市役所の集団討論
・1グループ受験者8名、面接官4名
・時間は30分
・グループは事務職と技術職の混合
・最終試験のうちの1つ。同じ日に個人面接が20分
私が受験した市役所では、事前に「結論は出さなくても良いですが、時間が来たら打ち切ります。」と言われていました。8名の意見を30分で聞いてまとめるのは厳しく、私のグループは意見をまとめている途中で終了になってしまいました。
自治体によっては「まとめまですること」「結論を出すこと」と言われる場合もあるので、その際はグループで協力して結論を出す必要があります。
なお、試験時間・1グループあたりの人数・テーマなど、集団討論に関する詳細は試験当日までわかりませんでした。
集団討論の流れ
私が受けた市役所の集団討論の流れを紹介します。他の自治体を受けた友人から聞いたり、ネットの情報も見ましたが、どこの自治体も基本的な流れは同じです。
集団討論のテーマ
集団討論におけるテーマは非常に幅広いですが、あえて分類すると次のパターンにわけることができます。
時事問題
例:高齢化対策、コロナ対策、環境問題など
各自治体の条例や基本計画に関するテーマ
例:本市の〇〇計画についてより良くするためにはどうすればよいか
国の政策に関するテーマ
例:小学校教育におけるプログラミン教育の是非
集団討論のテーマは様々なので、テーマを予想して、自分の考えを事前にまとめておくのは得策ではありません。
それに集団討論は良い意見を言えば合格できるものではなく、他の受験者と協力しながら意見をまとめていくものです。
集団討論の出題例
実際の出題例を見た方が想像しやすいと思うので、ここでは集団討論のテーマをいくつか紹介します。
山形市
近年、高齢者ドライバーの交通事故が増加する一方で、山形市は「自家用車が生活に密着している」という事情があります。このような中、安全安心なまちづくりを行うためにはどのような対策が必要か、費用対効果も踏まえ、検討してください。
名古屋市
近年、ワークライフバランスの実現に向けて、長時間労働の是正やテレワーク等の柔軟な働き方の推進など、社会全体で働き方改革が議論されているところです。そこで、ワークライフバランスについてのあなたの考えを述べてください。また、限られた財源や人員の中で、行政サービスを低下させることなくワークライフバランスを実現させるために、組織としてどのように取り組んでいくべきか、グループで論じてください。
広島市
広島市では、地域の祭りや清掃など様々な活動を行う町内会・自治会のほか、災害時の自主的な救出活動を行う自主防災会、福祉のまちづくりを進める地区社会福祉協議会など、地域ごとに多種多様な地域団体が運営されているが、各地域団体のリーダーからは団体の運営・維持を心配する声が上がっている。こうした状況の背景について考察・整理した上で、本市としてどのように取り組むべきか討論し、グループとしての考えをまとめなさい。
岡山市
岡山市では市制施行日である6月1日を、市民みんなが岡山市のことを考える日「岡山市民の日」と定めています。郷土・岡山への理解と関心を深め、愛着と誇りを育み、魅力あるまちづくりを進めていくきっかけとなるよう岡山市民の日のキャッチコピーをグループとして1つ決め、その理由をまとめなさい。
熊本市
熊本経済の発展と熊本の魅力の創造・発信について、国内外から熊本が訪問先に選ばれるよう、強みである歴史・文化や食の魅力をいかしながら、観光ニーズの多様化・個性化に対応していくために、どのような取り組みが必要か、グループで話し合い、意見をまとめなさい。
集団討論のテーマが非常に幅広いことがおわかり頂けただけたでしょうか。
このように集団討論のテーマは何が出題されるか予想できません。
集団討論を突破するにはこれから紹介する「集団討論のコツ」と「集団討論で見られるポイント」を理解する必要があります!
ちなみに私がいた市役所では過去に次のテーマが出題されました。
大型商業施設の郊外出店の是非
〇〇市に自然は必要か
自治体活動の減少に対する行政の取り組み
赤ちゃんポストの是非
成人年齢の18歳引き下げの是非
事件の被疑者、被害者の実名公表の是非
休暇の分散化のメリット、デメリット
秋入学の是非
役割毎のメリットとデメリット
集団討論では役割分担することが多いと思います。私が受けた市役所では「役職を決める場合は試験開始前に決めておいて下さい」と言われたため、事前に役割を決めてから試験会場に入室しました。
各役割についてメリットとデメリットを挙げてみましたので、自分に合った役割を選ぶ際の参考にしてください。
司会
メリット
- 討論のスタートは司会からなので必然的に発言回数が増える
- 発言が少ない人に話しを振りやすい立場
デメリット
- 議論の進行をしつつ意見をまとめるので忙しい
- 自分の意見しか言わない人をまとめるのが大変
- 上手くまとめられないと他者にまとめ役を奪われる
タイムキーパー
メリット
- 時間が来るごとに「あと〇〇分です!」と言えるので、意外と発言しやすい
- なかなかまとめに入らない時に「そろそろ時間なのでまとめに入りませんか?」と討論の遅れを修正できる
デメリット
- みんな時間を気にしているので役割の意味がない
- 試験時間は面接官の時計で測定されているので、時間が余ったり足りなかったりすることがある
書記
メリット
- 内容をまとめているため各受験者の意見を把握しやすく、話しを整理する機会が多い
- 書き留めた内容を見ているので議論がずれていたら軌道修正してあげることができる
デメリット
- 書くことに徹して、発言の機会を逃さないように気をつける必要がある
- 細かい点を確認される可能性がある
- 結局、みんなメモを取っている
司会にはならない方が良い
よほど自信がない限り集団討論で司会になるべきではありません。
私の友人3名も同じ市役所の集団討論を受けましたが、全員司会になって落ちています。落ちた原因ですが、集団討論で司会になりたがる人は試験に受かることが目的になってしまっているからです。
受かることが目的なので、自分に司会の資質があるかどうか判断せずに司会になってしまっているケースが非常に多いです。
司会には、自分の意見を曲げない人や話しが長い人を上手くコントロールして、議論を円滑に進めることが求められますが、これはかなり難しいです。グダグダになって議論が全く進まないこともあります。
それに司会の他にまとめるのが上手いがいると、結局はその人がまとめて、司会の面目が失われてしまうこともあります。
よって、司会になった人が司会としての役割を果たせず、面接官からの評価が下がることがあるため、相当な自信がないかぎり、というか自信があったとしても司会にはなるべきではないです。
集団討論を突破するためのコツ7つ
ここからは集団討論を突破するコツを紹介します。全て大切なことなので、実際に受ける際は何度も読み返してみてください。
①集団討論とディベートは違うことを理解する
集団討論とディベートの違いを理解することは非常に大切です。
ディベート
意見の異なる立場のものが自分たちの意見を納得させ、自分側に引き込むこと
集団討論
個人それぞれの意見をできるだけ反映し、集団として1つの意見を出すこと
集団討論は良い意見が言えたから合格できるわけではありません。グループとしてより良い行政にするためにはどうすれば良いかという姿勢が大切です。
よって、集団討論では「自分の意見が正しい!」「自分の意見は絶対曲げない!」という姿勢は避け、受験者全員で協力する必要があります。
②意見や考えは柔軟に変える
集団討論はグループとして意見をまとめる必要があります。なので、他の受験者の意見を参考に、自分の考えを改めることは全く問題ありません。
たまに自分の意見をずっと押し通す人がいますが、面接官は「人の意見を聞けない人」と判断します。他の人の意見も踏まえてグループとして最善の結論を導き出すのが集団討論です。
したがって、集団討論では途中で自分の考えを柔軟に変化させることも非常に大切です。
ポイント
- 集団討論はグループで協力することが大切
- 自分の意見は柔軟に変える
③相手の意見を批判しない
集団討論は多くの受験者が意見を言う場です。自分の考えと違っても決して批判してはいけません。自分では批判していなくても、「でも」「しかし」など、使う言葉によっては相手の意見を批判しているように受け取られます。
相手の意見と考えが違う場合は、「確かにそうですね、私の場合は~」「その意見は思いつきませんでした」など、相手の考えに同調した上で意見を述べるようにしましょう。
公務員は相手を思いやれる人である必要があります。自分の意見を優先させるのではなく、相手の意見も認めることで面接官のポイントもアップするでしょう。
ポイント
- 相手の意見は絶対に否定しない
- 考えが違う場合でも相手の意見に同調する
- 相手の意見を認めることで面接官からの印象も良くなる
④意見は端的かつ論理的に言う
集団討論では一人当たりの発言機会は多くありません。なので、意見は端的に、かつ相手を納得させるために論理的に言う必要があります。
公務員、特に市役所職員は住民に説明する機会が多いです。その際、良くわからない説明だと住民を納得させることはできませんし、相手を怒らせてしまうこともあります。
そのため、面接官は受験者が端的にわかりやすい言葉を使って、相手を納得させるように話せているかを見ています。
よって、集団討論ではダラダラと意見を言うのは禁物です。
論理的に話すために、主張→理由→実体験→再度主張の流れで1分以内で話すことを意識しましょう!
ポイント
- 端的かつ論理的に話す
- わかりやすく説明できるかが見られる
- ダラダラ発言しない。長くても1分以内で話す
⑤全員に発言の機会を与える
集団討論では積極的に発言しない人が必ずいます。私が受けた時も2名ほどいました。
集団討論は協働です。発言していない人を放置してしまうとグループとしての評価が下がってしまいます。
司会でないと話しを振りづらいと思いますが、発言していない人がいたら「〇〇さんはどう思いますか?」と、発言していない人に発言の機会を与えましょう。
私も隣の受験者が全く発言していなかったので、「〇〇さんはどのようにお考えですか?」と声をかけました。他の受験者は自分のことで精一杯だったのか、発言していない人に声かけしたのは私だけでした。なので、声掛けするだけで、「周りに配慮できる人」と高評価を得ることができます。
ポイント
- 発言していない人に声をかける
- 発言していない人を放置するのはNG
⑥表情と声を意識する
明るい表情ではっきりと話すことが大切です。試験となると緊張してしまうのか、私が受けた時も多くの人の顔が引きつっていました。
公務員になると住民や他部署の人など様々な人と仕事をします。「多くの人に好かれそうな人物」と面接官に思われれば、高評価が得られます。
そのためには表情と声が重要ですので、当日は緊張してしまうかもしれませんが明るい表情とはきはきした声で話すことを意識しましょう!
ポイント
- 明るい表情ではっきりと話し
- 「多くの人に好かれそうな人物」と面接官に思わせることが大切
- 緊張している時こそ笑顔で!
⑦他の受験者の意見もメモする
社会人になるとメモを取るのは当たり前で、メモを取っていない人は「人の話しを聞いていない人」と思われてしまいます。
また、集団討論は非常に長いので、最後にグループとしての意見をまとめる際に、他の受験者の意見がわからないと自分がまとめの議論に参加できなくなります。
さらに、メモを取っておけば、それを自分の意見に取り込むことができます。他人の意見を反映させながら自分の意見を修正できれば、面接官から人の話しを聞いている人と高評価を得ることができます。
ポイント
- 書記じゃなくても必ずメモは取る
- メモは最後のまとめの時に役に立つ
- メモを取ることで「人の話しを聞いている人」と評価される
集団討論で見られるポイント。これらを意識しないと不合格確定。
ここでは面接官が受験生の何を見て評価しているかを解説します。
上で紹介した「集団討論を突破する7つのコツ」を実践するとしても、集団討論で見られるポイントを理解しているのとしていないのでは、合否に大きく影響しますので、理解するまで読んでください。
自分の意見を押し付けようとしていないか
面接官は受験者が「自分の意見を押し付けようとしていないか」を見ています。
実際に公務員として働いて感じたことですが、自分の意見を押し付ける人は仕事ができないことが多く、トラブルメーカーになることもあります。トラブルメーカーは他の人の仕事を増やしてしまいます。
人員が削減されている中、トラブルメーカー職員が入ることは人事課としても絶対に避けたいところです。
なので、自分の意見を押し付けようとせず、周りの職員と協働して仕事ができるかを面接で見ています。
端的かつ論理的に話せているか
面接官は受験者が端的かつ論理的に話せているかを見ています。
端的かつ論理的に話せるかどうかを見ることで、相手にわかりやすく伝える能力があるかを判断しています。
市役所は多くの住民相手に説明する機会が多く、決して聞き分けの良い方ばかりではありません。説明がわかりづらいと、住民の理解はなかなか得られません。
そのため、受験者が端的にわかりやすく説明できるかどうかを集団討論で見ることで、住民に説明できる能力があるかどうかを判断しています。
気遣いができているか
公務員として働いて実感しましたが、細かい気配りができる人は仕事ができますし、良好な人間関係を築くことができます。
気遣いができるかを集団討論で判断するのは無理と思った方もいるかもしれませんが、実は集団討論には気遣いができるかを判断できるポイントがあります。
気遣いの判断ポイント
・発言していない人に話しを振る
・自分の意見に他の受験者の意見を踏まえる
・相手の意見に反応する
自分の意見を述べる時に「〇〇さんの意見も参考になりました」「▲▲さんの意見は今まで考えたことがありませんでした」などと発言することで、相手の意見を取り入れるという気遣いができます。
また、他の人が意見を言い終わった後に、「なるほど」「その意見は考え付きませんでした」などと反応することで、意見を言い終わった後の気まずさを解消させるという気遣いができます。
補足
集団討論では自分の意見を言い終わった後、相槌はしてくれるが言葉を発して反応してくれることは少なく、「自分の意見はよくなかったか」と気まずくなることがあります。きちんと言葉で反応してくれることは、この気まずさを解消させることになります。
集団討論の対策方法
集団討論は公務員特有のものであり、民間企業の就活や転職の面接ではなかなか経験できない試験です。そのため、模擬集団討論で、集団討論の流れや形式を把握することで、本番に備えることが大切です。
できれば模擬集団討論は複数回受けることをオススメします。複数回受ければ、自分に適した役割や時間配分の仕方を知ることができるからです。
模擬集団討論は次の公務員予備校で受けることができます。
これらの中で、集団討論対策が独立しているのはLECだけです。他は面接対策講座の中に集団討論対策が含まれています。
模擬集団討論を受ける際は「集団討論を突破するためのコツ7つ」を意識しましょう!
最後に
以上、集団討論の説明と集団討論を突破するコツの紹介でした。
集団討論を突破するためのコツを知っておくだけでも集団討論で面接官に与える印象は大きく変わるはずです。個人面接の対策も大切ですが、集団討論は他の受験者と相対するので、良い印象を与える良い機会です。
決して集団討論の対策は疎かにせず、準備して臨みましょう!
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市役所面接でよく聞かれる質問10個と回答例
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