この記事の概要
公務員として働いたことがある人なら誰しもが今の職場に不満を抱き「転職しようかな?」と思ったことがあるはず。
しかし、「転職先でも不満が募ったらどうしよう」「そもそも何を目的に転職するのかわからない」など悩みは尽きません。
公務員だった私も転職活動を始めたばかりのときは、同じような悩みを抱えてきました。
しかし、2年間転職活動を続けたことで、自分が転職するべきかどうか段々とわかってきました。
そこでこの記事では私の経験を基に公務員から転職すべきでない人の特徴と民間に転職する方法を紹介します。
目次
公務員の離職率
まずは公務員の離職率を見てみましょう。民間とどのくらい差があるのでしょうか。
公務員の離職率はかなり低い
市町村や県庁に勤める地方公務員(一般行政職)の離職率は約1%とかなり低い離職率です。
行政職の他に教育職と警察職の離職率も算出しましたが、いづれも1%前半となりました。なお、離職率は定年や懲戒免職などによる退職を除いた普通退職を基に計算しています。
国家公務員の離職率は3.2%と地方公務員より少し高くなりました。
普通退職 | 職員数 | 離職率 | |
都道府県 | 2,832 | 232,410 | 1.2% |
指定都市 | 1,054 | 123,781 | 0.9% |
特別区・市町村 | 6,677 | 555,816 | 1.2% |
先生 | 10,524 | 918,529 | 1.1% |
警察職 | 3,734 | 289,863 | 1.3% |
国家公務員 | 9,128 | 282,882 | 3.2% |
出典:地方公務員の退職状況等調査、地方公務員給与実態調査結果
一方、民間企業の離職率は男性が13%、女性が15%となり、公務員よりかなり高い離職率になりました。最も離職率の低い業界である金融保険業界でも6.2%でした。
なお、民間企業の離職率は雇用動向調査結果の概要を参考にしました。
このことから公務員の離職率がいかに低いかがわかると思います。
公務員を辞めたい理由
私がいた県庁で「公務員を辞めたい理由」をアンケート調査したことがあります。その結果、次のような回答がありました。
- 仕事がつまらない
- 無駄な仕事が多い
- 業務量、残業が多い
- 給料が低い
どれも公務員特有のものかと思います。それでは辞めたいと思った理由を具体的に見てみましょう。
【事例1】仕事がつまらない
県庁の仕事は調整連絡が多く、しかも上手くいかないことが多い。希望する部署へ配属されることも少なく、やりがいを感じられない。
【事例2】無駄な仕事が多い
国からの事務依頼など本当に住民に必要な仕事かわからない仕事が多い。
また、1つの仕事を行うのにも決裁が毎回必要になる。私の部署では住民から来たメールに返信する場合も毎回決裁が必要だった。
【事例3】業務量、残業が多い
残業が常態化している。20時になったら自動的にパソコンが落ちるため、途中だった作業が保存されなかったことがある。
また、業務量は増えるのに人員は削減されるので毎年業務量が増えている。
【事例4】給料が低い
30歳で銀行から転職してきたが年収が200万円下がった。部長になっても1000万ほどで、昨今の物価上昇を踏まえると共働きが必須である。
以上のような理由が公務員を辞めたい理由として多くを占めます。
公務員から転職すべきでない人の特徴
嫌なことがあると、そのストレスから逃げたいと思い、後先考えずに転職してしまって失敗するケースがあります。
今の職場で当たり前と思っていたことも、いざ転職してみると実はありがたいことだったということも。
そこで本章では、私や私の知人の事例を基に、公務員から転職するべきでない人の特徴を紹介します。
- 今の職場に気の合う人がいる・人間関係で悩んでいる
- 何となく転職したいと思っている
- 新卒入庁後1年以内
今の職場に気の合う人がいる・人間関係で悩んでる
■ 人間関係は解消できることが多い
人間関係は異動や周りの環境の変化などで解消されやすいです。また、今の職場に1人でも相談できたり、気軽に話せる人がいれば精神的にも安定します。
「上司が使えない」「雰囲気が最悪」など職場に不満を抱えている人は、相手だけでなく自分自身にも問題がないか今一度自分自身に問いかけてみてください。
■ 転職先でも良好な人間関係が築けるわけでない
コミュニケーション能力に自信がある人でも、次の職場で人間関係に悩むことがあります。
また、転職先では人間関係を一から構築する必要があり、慣れるまでに労力と時間がかかります。
■ 今の職場の人は大切にしよう
私は公務員時代には休みの日に遊びに行ったり、普段から飲みに行く人がいました。住民から苦情を受けることが多く大変でしたが、良い仲間がいたので乗り越えることができました。
なので、良き仲間が職場にいる場合は恵まれた環境であることを忘れないでください。
何となく転職したいと思っている
■ 不満は一時的であることが多い
「現職に何かしらの不満がある」「周りが転職しているから、自分も何となく転職したい」という人は転職すべきではありません。
不満は一時的なものであることが多く、自分にも原因がある可能性が高いからです。いつまでたっても不満が解消されない場合は転職を考えてもいいですが、1度冷静になって職場の良い点を考えてみてください。
■ 何となく転職した場合、次の職場でも不満を感じる
「今の会社では本当にやりたことができないのか」「次の転職先ではやりたい仕事ができるのか」を良く考えないで転職した場合、転職先でも不満を抱くことがあります。
転職したい明確な理由がない場合、「なぜ転職したいのか」「転職して何をやりたいのか」「転職先の仕事は本当に転職してやりたいことなのか」を本気で考えてみてください。明確な答えが出ないのであれば公務員に留まった方が良いです。
入庁後1年以内
■ ある程度の我慢は必要
学生から公務員になって大人の身勝手さに驚きます。住民や上司が理不尽で辞めたいと思いますが、残念ながら社会では理不尽なことばかりです。
心身に障害をきたすほど我慢する必要はありませんが、入庁後すぐの離職は次の転職先を探すときの面接で懸念材料になります。
■ 短期離職の懸念がある
面接では転職理由を必ず聞かれますが、1年以内の離職はマイナスイメージを持たれやすいです。
上司のパワハラや住民からの怒号に耐えられなくなったという理由は面接官にとっては「それだけのことで離職するのか」と思われる可能性があることを理解しておきましょう。
■ 公務員の強みは部署異動ができること
職場環境が悪くても職場環境を改善できる環境が公務員にはあります。
今の上司と割が合わなくても、管理職は1~2年で異動することが多いです。
仕事が合わないと思ったら、担当業務の変更や部署異動を申し出てみましょう。行動してもなかなか改善されないかもしれませんが、行動しなければ何も変わりません。
公務員から転職すべき人の特徴
次に転職すべき人はどういう人か見てみましょう。
不満解消のために行動したが改善されなかった
「上司が話しを聞いてくれない」「やりたい仕事ができない」などの不満を抱きながらも、何も行動していない人も多いのではないでしょうか。
私自身、県庁時代に希望する部署に行くために次のことを実践しました。
- 実費(200万)で大学院に行く
- 学会に入会し、学会に参加する
- 英語を勉強する
しかし、人事面談で「君が希望の部署に戻れる可能性は低い」と言われました。
これが企業が納得してくれる転職理由になるかどうか複数の転職エージェントに確認しましたが、「そこまで行動したのであれば、十分な転職理由になる」と言われました。実際、この転職理由は本当に企業に納得してもらえることができ、転職理由が明確になった後はほとんど面接に落ちることはありませんでした。
やりたいことが明確な人
一時的な不満で公務員から転職したい人の多くは、周りに流されて未経験採用が多い業界に転職したいと考えます。
しかし、転職後のプランが明確になっていないと入社後に後悔することになるだけでなく、面接官が納得する転職理由や志望動機を答えることができません。
自分のやりたいことを明確にした上で、なぜやりたいのか、それは公務員ではできないことなのかをじっくり考える必要があります。
年収や待遇が改善する
公務員の待遇や福利厚生は決して悪いありませんが、それでも公務員の処遇に不満を持ち、転職したい方はいると思います。しかし、転職債の将来年収を事前に把握することは難しいです。
未経験では年収が下がるパターンが多いですが、コンサル系など一部の業界や職種では未経験でも年収が上がることがあります。
「知人が勤めている」「転職エージェントが確実な情報を持っている」など、確かな情報を基に待遇や福利厚生が改善することが明らかな場合は転職してもよいでしょう。
公務員から民間に転職する方法
私は20代と30代に転職を経験しましたが、年代によって求められることは異なります。
20代は仕事への情熱が求められる
20代は社会人になって間もなく、新卒と同等と考えている企業も少なくありません。社会人としてのマナーを身に付けているため教育の必要があまりないと考えている企業もあります。
面接では「やりたい仕事」「これまでの仕事で嬉しかったこと」など仕事に関する質問が多いです。公務員としてどんな仕事をしてきたかを振り返り、何が得意で何が不得意かを自己分析しましょう。
その上で、自分なら企業の仕事に情熱を持って取り組めることをアピールしましょう!
30代は調整力やマネジメント力を示す
公務員も30代は中堅扱いになり、部下に仕事を教えたり、部長や議員に対して説明する機会も多くなってきます。また、部内外の調整業務も発生し、なかなかうまく仕事が進まず悩んだこともあるかと思います。
しかし、これらの経験が30代での転職では必要になります。私自身、民間に勤めていますが、特に公務員の調整力は非常に優れていると感じています。
30代での転職はコンサルなど事業会社と官公庁の間に入って仕事をする企業を選ぶと内定する可能性が高くなるでしょう。
40代はマネジメント力を積極的にアピールする
民間において管理職になる人は40代前半からなっている人が多く、公務員よりも出世が早いです。
公務員も40代になると仕事の進捗確認だけでなく、不祥事の対応や部下のモチベーション維持など、通常業務以外のことが増えます。
これらの経験をアピールすることで面接に通る可能性が高くなります。
公務員から転職するために何から始めていいかわからない方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事転職活動の始め方完全ガイド
公務員から転職すると後悔すること
公務員から転職する時は次の点に注意してください。これは実際に私が経験したことです。
- 社会的地位を失う
- 福利厚生が悪くなる
- 転勤がある場合がある
- 人間関係を一から構築する必要がある
公務員は民間企業よりも社会的地位が高いです。住宅ローンの金利も今勤めている会社(東証プライム市場)よりも優遇されていますし、親戚からの信頼も高いです。
また、福利厚生が悪くなることも多いです。特に女性は公務員であれば最大3年間育児休暇が取れますが、民間では長くても2年で1年という企業も多いです。
転勤も要注意です。子供が小さいから、家を買ったからという理由は基本的に聞いてくれません。ある程度勤務エリアが絞られる公務員は転勤のリスクも低く、家族からも喜ばれる仕事であるのは間違いないです。
その他、私が実際に公務員を辞めて後悔したことは次の記事で詳しく紹介しています。
【まとめ】公務員の方が良かったと思わないために
この記事では公務員から転職すべきか迷っている向けに次のことを解説してきました。
- 公務員の離職率は民間よりもはるかに低い
- 公務員から転職すべきでない人の特徴
- 年代別の公務員から転職する方法
転職で実現したいもののなかで、妥協できるものと妥協できないものがあると思います。それらを決めるにはある程度の時間が必要であり、変わるものでもあります。
この記事で紹介した『転職すべきでない人の特徴』を読んで、本当に転職すべきかどうかをよく考えてみてください。