公務員を退職するけど事前に退職金がいくらもらえるか知りたい
あと何年働けば目標の退職金になるかが知りたい
このような悩みありませんか?
そこでこの記事では地方公務員の退職金の計算方法を紹介します。
退職金の計算方法ってわかりづらいですよね。退職金制度に関する条例や資料を読んでもよくわからないという方のために、できるだけわかりやすい言葉で紹介していきます。
この記事を読めば退職金を自分で計算することができるようになります!
退職金=基本額+調整額
退職金は下記の計算式で計算されます。
#退職金は正式には退職手当と呼びますが、この記事では退職金と言います。
まずは基本額の項目を1つずつ解説していきます。
基本額の算出方法
退職時の給料月額
給料月額=本棒+給料の調整額で計算します。
給料の調整額が支給されている医療職及び教育職の職員はその額を加えた額が給料月額となります。給料の調整額は支給されていないことが多いので、ほとんどの方は本棒が給料月額となります。
なお、管理職手当は「給料の特別調整額」であり、給料の調整額ではないため関係ありません。
加算割合
「早期退職募集制度による退職」または「勧奨退職」の場合、加算割合の特例があります。勧奨退職は元々あった制度で、早期退職募集制度による退職は平成25年に導入された制度です。どちらも定年前に辞めることですが、次のような違いがあります。
早期退職 | 勧奨退職 |
---|---|
条件 | |
・勤続年数20年以上 ・退職時の満年齢が定年から15を減じた年齢以上(60歳定年の場合は45歳以上) | ・勤続年数25年以上 ・退職時の満年齢が定年から10を減じた年齢以上(60歳定年の場合は50歳以上) |
位置づけ | |
自分から応募して認定を受ける必要がある | 任命権者が特定の個人に退職を勧奨する |
加算割合 | |
定年までの年数×3% ※ただし、定年1年前は2% (45歳:45%,50歳:30%,55歳:15%) | 定年までの年数×2% (50歳:20%,55歳:10%) |
早期退職募集制度による退職の方が、条件が緩く、加算割合も大きくなっています。
しかし、応募期間があり応募期間が過ぎると次年度の募集を待たなくてはならないデメリットもあります。
「早期退職募集制度による退職」「勧奨退職」の詳細が知りたい方はこちらの記事が非常に参考になります。
勤続年数・退職事由に応じた支給率
「基礎となる期間-除算期間」で算出した勤続年数と退職事由により決まります。
基礎となる期間
・在職期間。職員となった日の属する月から退職した日の属する月までで計算する。
・1年未満の端数は切り捨てる(3年5か月で退職→在職期間3年)
除算期間
・事由によって除算される期間が異なります。
除算期間 | 事由 |
3分の1 | ・育児休業(子が1歳未満) |
2分の1 | ・育児休業(子が1歳以上) ・休職 ・停職 ・分限休業 ・高齢者部分休業 |
全期間 | ・専従休職 ・自己啓発等休業 ・配偶者同行休業 |
除算期間は月単位で考えます。
例えば、2021年5月1日~2022年3月31日までの11か月間育児休業を取得した場合は、11か月×1/2=6月分が除算されます。端数が生じた場合は切り上げます。
勤続年数・退職事由に応じた支給率(退職手当支給率早見表[PDFファイル])
上で算出した勤続年数(基礎となる期間-除算期間)と退職事由でどの支給率に該当するかを確認します。
ここでは参考に宮城県の退職手当支給率を記載していますが、ほとんどの自治体で退職手当支給率は変わりません。
しかしながら、私が調べた限り東京都及び市区町村の支給率は退職事由による支給率の差はありません。詳しくは東京都人事委員会のホームページをご覧ください。
調整額の算出方法
調整額は在職期間中の役職及び給料表の級に応じて支給されるものです。
調整額は基本額よりも複雑でよくわからない人が多いと思いますので、調整額のポイントをわかりやすく説明していきます。
調整額=調整月額×60月分
調整額は調整月額×60月分支給されます。調整月額は職員の区分(役職・級)によって変わります。参考に私の県庁での調整月額を載せておきます。
区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
調整月額 | 65,000 | 59,550 | 54,150 | 43,350 | 32,500 | 27,100 | 21,700 | 0 |
級 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2・1 |
役職 | 部長 | 次長 | 課長 | 課長補佐 | 副主幹 | 係長 | 主任 | 主事 |
例えば、係長であれば第6区分(給料表4級)に該当するので、27,100円×60月分=1,626,000円です。
調整額が支給されないまたは1/2のみ支給される場合がある
①調整額が支給されない人
・勤続年数9年以下の自己都合退職者
②調整額が1/2支給される人
・勤続10年以上24年以下の自己都合退職者
・勤続4年以下の自己都合以外の退職者
①の場合、調整額は0です。
②の場合、調整額の2分の1に相当する額が支給されます。
各自治体の調整月額を調べる方法
上の表は私のいた県庁のもので、調整月額は各自治体によって異なります。
ここでは、自分が所属する自治体の調整月額を調べる方法を横浜市を例にして紹介します。
step
1「横浜市 退職手当 条例」で検索する
step
2横浜市退職手当条例をクリックする
多くの自治体が「〇〇市退職手当条例」や「職員の退職手当に関する条例」等の表現となっています。
step
3退職手当の調整額が定められた箇所を探す
横浜市では「退職手当の調整額」という項目で各区分の調整月額が定められていました。
(退職手当の調整額)
第8条の2 退職した者に対する退職手当の調整額は、(中略)次の各号に掲げる職員の区分に応じて当該各号に定める額のうちその額が最も多いものから順次その順位を付し、その第1順位から第60順位までの調整月額を合計した額とする。
(1) 第1号区分 95,400円
(2) 第2号区分 78,750円
(3) 第3号区分 65,000円
(4) 第4号区分 59,550円
(5) 第5号区分 54,150円
(6) 第6号区分 43,350円
(7) 第7号区分 32,500円
(8) 第8号区分 27,100円
(9) 第9号区分 21,700円
(10) 第10号区分 零
退職手当に関する条例がヒットしない場合
検索しても退職手当に関する条例がない場合があります。その場合、自分の自治体が市町村総合事務組合や市町村職員退職手当組合に加入しており、組合が退職金支給事務を行っています。
例えば、神奈川県には神奈川県市町村職員退職手当組合があり、伊勢原市や海老名市などが加入しています。組合に加入している市町村は組合の条例に基づいて退職金が支給されます。要するに退職金支給事業を各自治体ではなく、組合が担っているということです。
その場合、各都道府県の市町村総合事務組合のホームページで退職手当に関する条例を見れば、各区分の調整月額がわかります。また、組合に加入する市町村一覧も載っており、そこで自分の自治体が組合に加入してるかしていないかがわかります。
市町村総合事務組合とは
退職手当支給事業のほか、交通災害共済事業、公務災害事業、自治会館の運営などを担っている団体です。退職手当支給事業のみを担う市町村職員退職手当組合もあります。
自分がどの区分に該当するか調べる方法
各区分の調整月額がわかっても自分がどの区分に該当するかまではわかりません。
ここでも横浜市を例に自分がどの区分に該当するかを調べる方法を紹介します。
step
1「横浜市 退職手当 規則」で検索する
step
2横浜市退職手当条例施行規則をクリックする
step
3下の方にある別表を探す
細かくてほとんど見えませんが、各区分に「職務の級が〇級であったもの」とあります。よって、職務の級によってどの区分に該当するかがわかります。
退職金が市町村総合事務組合の条例に基づいている自治体は、組合の規則で定められています。
例えば、神奈川県市町村職員退職手当組合に加入している自治体の区分は下表のようとなっており、各自治体ごとの級によってどの区分に該当するかがわかります。(画像は一例です)
退職金の計算例
これまで退職金の計算方法を紹介してきました。
ここではいくつか退職金の計算例を示します。
子どもが小学生になるのを機に辞める場合(自己都合退職)
退職事由:自己都合
年齢:35 歳
退職時の給料月額:270,000 円
勤続年数:13年
休職期間:1年(育児休業取得のため)
職員の区分:第7号区分(調整月額21,700円)
【基本額の算出】
退職時の給料月額
270,000円
加算割合
条件に該当しない
勤続年数・退職事由に応じた支給率
退職金算定上の勤続期間:13年-1年×1/3=12年8か月→12年(端数切捨て)
勤続年数12年の自己都合による支給率:8.16912
基本額:270,000円×8.16912=2,205,662円(端数切捨て)・・・①
【調整額の算出】
調整額=職員の区分に応じた調整月額×在級月数×1/2※
※自己都合退職かつ勤続年数10年以上24年以下のため
調整額:第7号 21,700 円 × 60 月×1/2 = 651,000円・・・②
退職金→①2,205,662円+②651,000円=2,856,662円
転職するために辞める場合(自己都合退職)
退職事由:自己都合
年齢:31歳
退職時の給料月額:230,000 円
勤続年数:9年
休職期間:なし
職員の区分:勤続年数9年未満のため非該当
【基本額の算出】
退職時の給料月額
230,000円
加算割合
条件に該当しない
勤続年数・退職事由に応じた支給率
退職金算定上の勤続期間:9年
勤続年数12年の自己都合による支給率:4.5198
基本額:230,000円×4.5198=1,039,554円・・・①
【調整額の算出】
自己都合退職で勤続9年以下のため支給されない
調整額:0円・・・②
退職金→①1,039,554円+②0円=1,039,554円
親の介護で退職する場合(早期退職)
退職事由:早期退職募集制度による退職
年齢:55歳
退職時の給料月額:380,000 円
勤続年数:32年
休職期間:6か月(傷病のため)
職員の区分:第4号区分(調整月額43,350円)⇒24月分
第5号区分(調整月額32,500円)⇒36月分
【基本額の算出】
退職時の給料月額
380,000円
加算割合
1+(0.03×定年までの残年数)=(1+0.03×5年)=1.15
勤続年数・退職事由に応じた支給率
退職金算定上の勤続期間:32年-6か月×1/2=31年6か月→31年(端数切捨て)
勤続年数31年の早期退職による支給率:42.31035
基本額:380,000円×1.15×42.31035=18,489,622円(端数切捨て)
【調整額の算出】
調整額=職員の区分に応じた調整月額×在級月数
第4号43,350円 × 24月= 1,040,400円、第5号32,500円 × 36月= 1,170,000円
調整額: 1,040,400円+1,170,000円=2,210,400円・・・②
退職金→①18,489,622円+②2,210,400円=20,700,022円
退職金計算サイト:Ke!san
ke!sanで退職金を試算することができます。退職理由、加算割合、調整月額を指定できるので便利です。
よくある質問
年度途中で辞めた場合の勤続期間はどうなりますか。
(回答)年度途中で辞めた場合、その端数は切り捨てられます。例えば、10年10か月で辞めた場合は10年が勤続期間となります。
7か月で退職した場合、退職金は支給されますか。
(回答)6か月以上1年未満勤務した場合は勤続年数が1年とみなされるため退職金は支給されます。なお、6か月未満の場合は退職金は原則支給されません。
退職金はいつ支払われますか。
(回答)退職した日の属する翌月末に支払われます。
他の自治体に転職しますが退職金はどうなりますか。
(回答)今の自治体から次の自治体に転職するまでに空白期間がなければ退職金の算定期間は引き継がれます。その場合、今の自治体では退職金は受け取れません。
最後に
この記事では退職金の算出方法を紹介しました。
・退職金=基本額+調整額
・基本額は勤続年数が長いほど高い
・調整額は勤続年数9年以下だとゼロ
この記事で紹介した退職金の支給率や調整額をあくまで私の自治体の場合です。ほとんど同じだとは思いますが、自治体によっては細かい点で異なる場合もあることにご留意ください。
今回は退職金算出でポイントとなる点を紹介しましたが、この記事が退職金算出の手助けとなれば幸いです。